爆発的成長と衰退の時代をいかに生き延びるか『ビッグバン・イノベーション』『シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法』

   

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・なぜ、シャープ、任天堂は急激に衰退し、アマゾン、富士フィルム、Airbnbは勝ち残ったのか?
・なぜノキアは携帯電話の王座を一瞬にして引きずり降ろされたのか?
・なぜマッキンゼーもガートナーも携帯電話の普及予測を大きく外してしまったのか?
・Uber、GitHub、Zappos、Tesla、TED、Netflixなどの飛躍型企業は今までの企業と何が違うのか?
・ベータマックスと蒸気自動車に見られる共通の失敗とは何か?
・Zyngaはなぜ世界最大のゲームプロバイダーになれなかったのか?
・米国郵政公社はなぜゾンビ企業になってしまったのか?

今日は、現在のマーケットの特徴とイノベーションの関係に迫った2冊の本を紹介したいと思います。
『ビッグバン・イノベーション』(ダイアモンド社)と『シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法』(日経BP社)です。

それぞれの本は表現の方法は違いますが、共通のテーマを扱っています。

「マーケットに大きな変化をもたらし急成長する企業」をそれぞれ取り扱っています。

上記に挙げたのはそれぞれの本の中で興味を引きそうなトピックを抜粋したものです。

『ビッグバン・イノベーション』(原文では、Big Bang Disruption)では、その変化を「安定した事業を、ほんの数ヶ月か、時にはほんの数日で破壊する新たなタイプのイノベーション」と呼んでいます。

『シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法』では、そういった変化を起こす企業を「飛躍型企業」(原文では、Exponential Organization exponentialは指数関数的に急成長するという意味)と呼んでいます。

言い方は異なりますが、いずれも、短期間の間にマーケットの中で急速な成長を見せる企業やその現象を指す言葉です。

『シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法』では、本ブログでも取り上げている8つのテクノロジーが交わる際に起こる指数関数的な成長がテーマになっていますが、具体的な事例を取り上げながら、そういった企業に見られる特徴について分析しています。

冒頭、ガートナーとマッキンゼーが携帯電話の普及予測を大きく外したことが取り上げられています。
1980年代に有名なコンサルティング会社であるマッキンゼーはAT&Tに対して、2000年までに使われる携帯電話の台数を100万台未満と予測しました。実際は、1億台だったので、マッキンゼーの予測は1/100にも満たなかったわけです。
同様にガートナーは2009年に、2012年までにシンビアンがモバイル用端末の39%のシェアを握って2014年までにトップの座を守るだろうと予測しました。実際の結果は、シンビアンは2012年に廃業に追い込まれアンドロイドがiPhoneを超えるシェアを握ることになりました。ガートナーが予測した台数はシンビアンが2億3000万台という数字でしたが、実際はAndroidが10億台を超える結果を残したのです。

専門家ですら未来の予測は難しいという話は有名な話ですが、(有名な話としてはIBMの創業者のトーマス・J・ワトソンが今から70年前に「コンピュータは全世界の市場でせいぜい5台ぐらいしか売れないだろう」といったことがよく取り上げられます。)本書では、なぜ世界的に有名で高品質のリサーチ・コンサルティング機能を持つマッキンゼーやガートナーですら予測を誤るのかから考察が始まっています。

結論としては、一般的な未来予測においては、指数関数的な成長を加味できないからだと結論づけています。
そして、現代の世の中ではすべての産業がデジタル化されていっていることにより、ムーアの法則がどの業界にも起きており、それが組み合わさることで指数関数的な成長が起きる時代が来ているとされています。

飛躍型企業として挙げられているのは、Airbnb、GitHub、Local Moters、Quirky、Google Ventures、Valve、Tesla、Tangerine、TED、Zappos、Uber、GoPro、Xiaomiなどの企業です。いずれもIT系の企業かITをうまく使いこなしている企業ということができると思います。

飛躍型企業の周りにある5つの特徴として下記が挙げられています。

S(Staff on Demand)オンデマンド型の人材調達
C(Community & Crowd)コミュニティとクラウド
A(Algorithms)アルゴリズム
L(Levereged Assets)外部資産の活用
E(Engagement)エンゲージメント

また、飛躍型企業の内側にある5つの特徴として下記が挙げられています。

I(Interface)インターフェイス
D(DashBoard)ダッシュボード
E(Experimentation)実験
A(Autonomy)自立型組織
S(Social Technology)ソーシャル技術

それぞれの特徴についての詳細な分析はぜひ本書をお読みいただきたいですが、簡単にイメージだけを記載するとこんな感じです。(この例は管理人が勝手に考えて書いています)

A社はラジコンを作る製造業の会社です。
今までは一般的な方法でラジコンを作っていましたが限界を感じ、飛躍型企業の特徴を取り入れることにしました。

まず、A社は自社の製品の設計書を自社のWebサイト上に公開し、誰でも閲覧できるようにしました。そして、自社のファンたちのコミュニティを作り積極的な改造やその情報の共有を促しました。(コミュニティとクラウド)

ファンコミュニティはWebサイト上に改造のための多種多様なアイデアを投稿し始めました。A社はファンたちがアップロードした情報が大量のものになってきたので、製品カテゴリーやパーツ、色、やりたいことなどによって検索できるような仕組みを作りました。(アルゴリズム)

A社はファンたちからアップされた改造部品のランキングと人気投票を行い、ランキングの上位にあがった製品のアイデアを出したファンに賞金を与えるコンテストを行いました。またコンテストで優秀な結果を残したアイデアの製品化も約束しました。このことで、ファンたちは自分たちの好きなものが製品化されるため、ますますA社のことが好きになり、アイデア出しに熱中しました(エンゲージメント)

A社は、これまでは自社工場を持っていましたが、ファンたちから上がってくるアイデアを形にするために、自社工場を売却し、その都度、世界中の小さな工場に発注するための仕組みを作りました。(外部資産の活用)

そして、最終的にファン・コミュニティの中で一番、熱心にアイデアを出していたユーザーたちからA社に就職したいものを募って自社の社員として登用しました。就職はできないけれどもプロジェクトに関与しプロフェッショナルな貢献をしてくれるユーザはプロジェクトごとに都度、ギャランティを払いました。(オンデマンド型の人材調達)

一方、社内では、ファンコミュニティに挙げられた大量のデータを適切に担当者に届ける社内用Webサイトが整備されました。(インターフェイス)

また、日々、あがってくる膨大な量のデータを管理し、成長させるためにダッシュボードが作られました。これは、アイデアの投稿数、投稿に対しての「いいね!」の数、他のSNSへのシェアの数、パーツの売上などを日々リアルタイムに管理できる仕組みです。(ダッシュボード)

新たな製品開発のために、今まで取り組んだことのないパーツとの組み合わせの中で何ができるかをユーザーとともに実験しました。例えば、リモートコントローラーや各種のセンサー、ドローン、スマートフォンなどのアプリとの連携です。これらは製品化できるかどうかわかりませんでしたが、まずは製品化を前提とせず、何ができるかをたくさんのプロジェクトを起こすことで追及しました。(実験)

たくさんのプロジェクトは上司の許可なく、各社員が自分が関与するコミュニティに対する責任を持つという前提で、自由に行われました。(自立型組織)

社員がプロジェクトを円滑に進めるために社内でのSNSの活用が推奨されました。自らのプロジェクトに足りないリソースや人材、知識を得るために、社内の別の社員の経験や知恵を活用できるように、全社員SNSが作られ活用されました。(ソーシャル技術)

結果として、A社の売上や成長率は、これまでの成長率と比べ物にならないほど伸びました。

イメージとしては、上記のような感じです。

また、本書では、飛躍型企業を立ち上げるためにどうするか、中小企業が飛躍型企業になるためにはどうするか、大企業が飛躍型企業になるにはどうするかも豊富な事例とともに取り上げられています。

『ビッグバン・イノベーション』の方はそういった飛躍型企業が市場に参入した時にマーケットにもたらす変化とそれに対してどのように振る舞うべきなのかが書かれた本です。

飛躍型企業は成長も早いが判断を誤ると異なる飛躍型企業に一瞬でシェアを奪われてしまうリスクがあるのが今日のマーケットだとされています。

2000年に入ってからも王座のポジションを取ったにも関わらず、一瞬のうちに見るも無残に市場を追い出されたり、経営難に陥った会社がいくつもありますよね。ノキアもそうですし、日本でもシャープがまさにそうといえるかもしれません。

取り上げられるキーワードは『シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法』と重複している点も多いですが、飛躍型企業でない企業が飛躍型企業に対してどう立ち向かうべきなのかという観点からもさまざまな考察がなされています。

また、飛躍型企業になりそうだったが失敗した企業などの事例も取り上げられています。

例えば、Zyngaは世界最大のSNSであるFacebookに乗っかることで世界最大のゲームプロバイダーになれる可能性もあったのに結果的には沈んでしまいましたね。

自社のノウハウを他業界にうまく転用して生き残りを図った富士フィルム(とそれに失敗したコダック)の例など、マーケティング事例としても興味深い事例が多々あげられています。

ますますグローバル化する世の中において、日本で起業する場合もはじめから『飛躍型企業』を生み出す前提でビジネスモデルを考えなければ、一瞬にして負けてしまう世の中がきているのかもしれません。

こんにちのマーケットを理解する上で参考になる2冊です。

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