すべてのサービスにChat UIを導入するLayer社の取り組み

   

すべてのサービスにChat UIを導入するLayer社の取り組み

いくつかの記事でChat UIがブラウザを代替するという近未来について紹介してきました。
また、その取り組みを通じて行われているカンバセーショナル(会話型/対話型)コマースのトレンドも紹介しました。

同じビジョンを持ちながら、違うアプローチでこの近未来に近づこうとしている起業家がいます。

Layer社を率いるRon Palmeri氏です。

名称未設定-1

Layer社は、すべてのアプリやサービスに簡単にChat UIを導入できるサービスを提供しています。

TechCrunch Tokyo 2015のゲストスピーカーとして登壇することを受けた紹介記事がテククランチにあります。

チャットUIこそブラウザに代わるもの、Layer創業者のビジョナリーに現状と未来の話を聞く

どんなアプリ/Webアプリケーションにも簡単にコミュニケーション機能を持たせられるLayerが$14.5M(シリーズA)を調達

この記事を読めばLayer社が行おうとしていることが理解できると思います。

記事中にもある通り、Ron Palmeri氏はFacebookなどの巨大プラットフォームが情報を独占することに危機感を持っています。これは、難しいところでユーザにとっては、一つのインターフェイス内の中ですべてが完結するようなアプリに利便性を感じる一方でその企業にすべての情報を独占されてしまうことによるデメリットも生じます。特に、個人情報に関する考え方については、Kik MessengerとTelegramの紹介記事でも述べましたが、いまやユーザにとって個人情報がきちんと守られるのか、あるいはプライバシーに関わる情報を部分的にバラバラのプラットフォームに分散させることでたとえ情報が流出したとしても最低限の被害に食い止めたいと考えるユーザが大半なのではないでしょうか。

Ron Palmeri氏は個人にとってもサード・パーティにとっても多様性が担保されている状態こそが健全なエコノミーだと考えています。

VentureBeatの下記の記事がLayerの現状と彼が見据える未来を要約しているので、翻訳して紹介します。

Layer muses on messaging’s future — and why some brands should skip Facebook

Layerはmessagingの未来を予見させる。ーなぜ、いくつかのブランドはFacebookを避けるべきなのか。

Facebook Messenger、Slack、Operatorが提示したものがなんであれ、私たちはカンバセーショナル(会話型/対話型)コマースの時代にいる。そこでは、電話をかけることは敬遠され、インスタントメッセージングが好まれる。しかし、さらに多くのアプリケーションやサービスがチャットサービスを導入したとしても、最近までは、開発者たちは独自のものを構築することは諦めていた。今は、Layerというコミュニケーションプラットフォームの登場により、ものごとはより簡単になった。そして、今では500ものライブアプリケーションに導入されるようになっている。

開発は2013年から続けられていたが、Layerが公式にリリースされたのは2014年の2月からだ。この間、「およそ30くらいのアプリケーション」が使っていたこのコミュニケーションインフラストラクチャーを利用する数は、ここまで17倍に伸びた。(訳注:原文では177%となっていますが、数字が合わないので17倍としています)LayerのCEOであるRon Palmeri氏は最低でも500のアプリケーションが何か面白いものを作ろうとしている「正しいサンプルグループ」だと考えている。

「これを構築する中で、メッセージングスタックをどのようにクラス分けすればよいか、そして、スケールさせながらどのように運べばよいのかという点についてベストなものを構築するには何が必要かということに関して必要な範囲を十分に理解しました。」
と彼は語っています。
「それは、サンプルコードに対するリクエストを受けつけるところからスタートしました。そして、さらに追及していくと、本当に有用なのはメッセージを同期させ、カスタマイズするためのオープンソースのユーザインターフェイスフレームワークであることがわかったのです。」

「私たちは人々が必要としている痒いところを理解しています」とPalmeri氏は話し続ける。
「Layerはリリースされてからまだ4クオーター(訳注:1年)しか経っていません。しかし、私たちはたくさんのそして様々なアプリが実体をともなって加速的に増えている状況を見ています。バックエンドでの統合や、WebフックやオープンUIのフレームワークによるサポートを受けて。こういった土台を築くのには時間がかかるものです。しかし、私たちは既にこれを構築しました。私たちにはさらに多くのお客さんがつくことになるでしょう。」

Gartnerによると、2017年にはアメリカのオンラインコマースからの売上はモバイルからのものが50%を超えるだろうと言われている。さらに、リサーチ会社の予測では今年の終わりまでに、モバイルのデジタルアシスタントを通すものだけで20億ドル以上の消費があると見込んでいる。最低でも、各ブランドは消費者と会話をしたくなるだろう。

プラットフォームたちが景観を支配しようとしている時に、Layerはメッセージング空間を独占しようとしている。Twilioが電話とSMSの世界でそうしたように。Layerの疑問はシンプルだ。開発者たちは独自のコミュニケーション機能を構築するために膨大な時間を費やすべきではない。その代わりに、彼らはLayerのツール群を利用してそれを行えば良いのだ。

FacebookはMessenger platformに関してこのアプローチ方法を取っている。そして、Everlane や Zulily といった主要な小売企業に提供している。しかし、信頼は問題にもなりうる。「私たちは多くの企業と対話した。Facebookの中で活動しているような企業とも。しかし、彼らは彼らが独自で持っているユーザ、データ、ユーザとの関係性をFacebookにゆだねて諦めてしまうことは望んでいない。」とPalmeri氏は言っている。

「Facebookはものすごく面白い仕事をしています。しかし、彼らはすべてをFacebookの文脈に引き込んでしまいます。」
と彼は続けます。
「私たちが会話を行った企業たちは独自にユーザとの関係性を構築したいのです。彼らはFacebookを通じては行いたくないのです。面白いことに、Facebookの取り組みはメッセージングの世界で何が起きるのか、の実験を前に進めるものです。それは私たちにとっても役に立ちます。」

Facebookはスペクトラムのひとつの端であるとすれば、もうひとつの端はOperatorのようなサービスだ。
Palmeri氏は賛辞を込めてこう言います。
「コマース体験に関するメッセージングサービスを構築しているすばらしい例のひとつです。」
Layerの共同創業者のTomaz Stolfa氏はこう信じている。
各ブランドは顧客と対話する際に顧客がブランドの世界観を抱くような経験をすることを望んでいる、と。
「彼らは、ノンブランドの店頭にすべてを委ねるようなことはしたくないのです。」

Layerは、Layerのプラットフォームを使ったいくつかの企業はエンゲージメント(訳注:ファンになり、ブランドに信頼感を抱くこと)とリテンション(訳注:継続率)において25%の増加を見せたと主張している。
Layerは、同社のサービスは開発者たちにプログラミングの手間を省かせ、ユーザがネイティブアプリで企業とコミュニケーションを取る際により多くの包括的な経験を提供できると信じている。
GoButler、Hinge、Udacity、Forbes、Trunk Clubといった企業がすでに同社のサービスを取り入れている。

「私たちは基礎の基礎となるようなコアメッセージングサービスを構築しています。デザイナーやプロジェクトマネージャーやCEOが想像できるすべての考えられるパターンを網羅することにより、それは可能になるのです。」
Layerは、新たな統合を行おうとしている。それは、「FacebookがMessengerに導入する可能性があるようなすばらしい付加機能」を作り出せるようなものになると考えるべきである。

「私たちは彼らが普段、日常的に使っている製品においてコミュニケーションがよりよくなることを望んでいます。」
と、Stolfaは説明している。
「経験にさらに付加価値をつけられるようなコアメッセージングプロダクトとして、私たちは製品を進化させています。私たちはもう間もなく本当にクールなものをお見せできると思います。」

以上

Ron Palmeriが主張しているように、また、これは管理人の経験上もいえることですが、すべてのコミュニケーションをプラットフォーム(ここでは、Facebook)に委ねようと考える企業はほとんどありません。

1. ユーザ情報を確保できない(特に分析においてFacebookが提供する情報には限界がある。自社のデータベースとマッチングできない)
2. ブランドイメージが担保できない
3. Facebookの方針に左右されてしまう

などの理由があるからです。

企業にとって、Facebookというのは諸刃の剣なのです。(一昔前に自治体の情報をすべてFacebookに委ねるといって炎上した市長がいましたね。)一昔前、Facebookページというのがまだ目新しかった頃、「いいね」ボタンを大量に集めた会社がありましたが、最終的には、Facebook広告を購入しなければ、その企業が発信する情報はユーザには届かなくなりました。そもそも、FacebookはプラットフォームをあくまでもCtoCのコミュニケーションの場と捉えているので(もしくはFacebookがそうでなくても、ユーザはFacebookにCtoCコミュニケーションをメインとして期待するので)そこにどのように、企業とユーザのコミュニケーションを導入していくのかはこれからの課題ではないでしょうか。

いずれにせよ、ブランド企業にとっては、上記のようなリスクがありますし、またスタートアップベンチャーにとっては、自社の製品に気軽にコミュニケーション機能を導入できることになるので、Layerには多くのニーズがあると思います。

中小企業にとっても、何百万もかけずにChat UIが導入できるということは魅力になると思います。

Kik Messengerが行おうとしているようなゲームや音楽、スタンプ、GIFアニメといったようなテキストメッセージ以外のサードパーティとの連携についても興味深いところです。また、企業でのChat UIの可能性を考えると、LINEがビジネスコネクトでやっているようなChat UIを通じて商品やサービスの注文ができたり、アドバイスに答えたり、レッスン動画を提供したり、こういったことは既存のプラットフォームの中では制限されるでしょうから各企業が独自の機能として実装していくんでしょうね。

引き続き、この分野の情報をおいかけていきます。

 - Converasational Commerce, マーケティング, 海外起業ニュース