ライブストリーミングアプリMEERKATのpivot(方向転換)とライブ配信ストリーミングメディアの今後について

   

みなさん、こんにちは。
エフェメラル・マーケティングの記事を取り上げる中で、今、アメリカで起きているライブストリーミングアプリを巡るPERISCOPEとMEERKATの戦いについて紹介しました。

先日、MEERKATのファウンダーであるBen RubinがTwitter(PERISCOPE)とFacebook(Facebook Live)に敗北を認め、方向性を転換するという出来事があったので、紹介します。

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日本語でもCNETとITMediaで記事になっています。

ITMedia
ライブストリーミングのMeerkat、Twitter(Periscope)への敗北認め方向転換へ

CNET
Meerkat、ライブ配信から新事業に軸足を移行

MEERKATのファウンダーであるBen RubinはMEDIUMの投稿の中で、投資家宛に送った手紙を紹介し、自身の考察を述べています。

モバイルのライブストリーミング配信を考える上で非常に興味深い考察なので紹介したいと思います。

MeerKatに関する最新情報 ー投資家の皆さまへ向けてのコンフィデンシャル(機密情報)

下記をお読み下さい。
来週もしくは再来週に、私たちを興奮させるものは何なのか、そして、私たちがこれからどこへ行こうとしているのかを再検討するお時間をセットできることを望んでいます。

Product Hunt上で私たちがMeerkatをローンチしてから既に1年も経ったとは信じられません。
それは竜巻のようなものでした。そして私たちはそこから多くを学びました。
その年は、ライブストリーミングビデオの急拡大、SXSW(毎年3月にアメリカ合衆国テキサス州オースティンで行なわれる、音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベント)の興奮、そして、Twitter社によるPeriscopeのローンチとともに始まりました。しかし、時が経つにつれ、それは荒波のようになっていきました。ーモバイルによる動画のブロードキャストは私たちが望むようなスピードでは拡大していかなかったのです。Twitter/PeriscopeとFacebook Libeによるディストリビューション(※訳注:ユーザへの伝播能力を指す)の優位性は初期のユーザたちを私たちから遠ざけさせ、私たちはもはや私たちが計画したようなスピードで素早く成長するということができなくなりました。その間になされたたくさんの投資を通じて、私たちは差別化につながるような、そして、私たちの生活の中に新たなライブコンテンツをもたらすようないくつかのキーとなる機能を構築しました。それは、開発者向けのAPIだったり、去年の8月になされたGoProとの統合だったり(GoProでの初めてのLive Stremingでした!)、 視聴者がライブキャストに参加できるCameo機能と呼ばれるようなものでした。

過去数年間で私たちのチームがライブストリーミング業界について何を考えるようになったか、幾つかの考察をシェアしたいと思います。これには、私たちが前進するための最高のチャンスに関して、会社をどのようにフォーカスしたかということに関するいくつかの決断についての考察も含まれます。私たちは新たな製品に投資をしています。それは、いくつかのチャレンジに対しての取り組みであり、また、モバイルライブビデオを世界中の人々に届けたいという私たちのビジョンを拡張してくれるものだと考えています。

ライブビデオはTwitterとFacebookにおける最優先事項の興味深い特徴となりましたが、私たちがMeerkatを通じて実現したかったような自律的な新しいネットワークを構築するには至っていません。私たちの仮説は、ブロードキャストに関するコストがゼロになれば(設備も必要なくなれば)、YoutubeがYoutuberとともに作り上げたようなライブブロードキャスター(ライブ配信者)による新たなコミュニティが構築されるだろうというものでした。時間がかかるとは思っていましたが、1年経てばポジティブな兆候がいくつか出てくるだろうと願っていました。私が学んだことの一つは、ライブ配信のフォーマットに則ってユーザを楽しませるということにはとても大きな心理的障壁がつきまとうということです。また、ライブのオーディエンスにとって価値が見いだせるようなものも同時にとても難しい(チャレンジング)なことだということです。

結果的に、セレブリティーでもメディアでもニュースでもない人々にとって、ライブ配信を行うことのバリュー・プロポジション(訳注:マーケティング用語で付加価値や優位性のこと、ユーザが望むことと自社が提供できるものが重なりあう領域のこと)が不明瞭になってしまったのです。

もしあなたがセレブリティー/メディア/ニュースの一員であれば、(そして、特にTwitterやFacebookでオーディエンスがいれば)、あなたのオーディエンスに対して、適切なタイミングで、ライブ配信を行うことは、新たな方法でコンテンツを届け、またオーディエンスと双方向のやり取りができることになるので明確な価値を見出すことができるでしょう。
既に現存するライブイベントの舞台裏のコンテンツなどに関しては特にそういえるでしょう。しかし、多くの普通の人にとっては、いつ、もしくはなぜライブ配信を行うのかといったことを理解するのはとても難しいことでした。これは写真をシェアすることとは異なります。こういう風に考えることができます。Instagramが出てくる前には、美しい写真とはどのようなものかそれをどう撮影したらよいのかは皆、既に理解していました。しかし、ライブ配信に関して言うと、"良い"ライブ配信をどのように作ればよいのかは誰もまだ知らないのです。

こういったことをすべて考慮すると、1対他のモバイルライブビデオはまだ幼年期の時代にあり、その成功の多くはメディアやスターやインフルエンサーに依存しているということができるでしょう。主要通貨はオーディエンスであり視聴者なのです。そういった尺度でTwitter/Periscope や Facebook Live と戦う限りにおいては、現在のMeerkatに勝ち目があるとは思いません。これらのプラットフォームは継続的にライブ配信を行う配信者を生み出そうと奔走していますが、私たちが昨年の夏に予想した高さの成長率や視聴率を獲得するには至っていません。大きなメディアのチームとコンテンツの権利に対して支払いを行った時は、オーディエンスをあるレベルでは楽しませ続けることができるとは思っています。(私たちはMichelle PhanのようなYoutuberや、Discovery ChannelのShark Weekのような卓越したコンテンツや、Hulu、The Weather Channel、TMZといったようなパブリッシャーがMeerkatのために制作したコンテンツによって素晴らしい瞬間を経験することができました。)しかし、それは継続的なものには思えませんでした。Facebook と Twitter はこの点においては、優位性にレバレッジをきかせることができるでしょう。

これらすべての中で明るい兆しも見えました。Meerkatの最高の瞬間というのは人々がお互いに知り合いで(オンライン上での知り合いという意味も含めて)一緒にライブ配信に参加してリアルタイムに双方向にやり取りを行うときに来るということを発見したのです。私たちはスレッドがいつまでもいつまでもいつまでも続く会話の中にこれを発見しました。特にこれはユーザがCameo機能を使った時に起きました。ライブ配信者がオーディエンスの姿を見ることができ、より人間的な形で双方向のやり取りを行う場合、人々はキャンプファイアーのように周りに集まり会話のセッションが続くのを見ているのです。そして、こういったグループは誰よりも継続してくれることがわかりました。

役員会のサポートと献身的なチーム全体を率いて、私たちは10月にこういったコンセプトで新たな製品を立ち上げます。そして、それはとても良いポテンシャルがあるものだと考えています。同時に、私たちはMeerkatは稼働し続け、安定させ、新たな注目すべき何かがネットワークの中で生まれていないかをモニタリングしたいと思っています。

原文:A New Breed of ‘Katから一部抜粋して翻訳

いかがでしたでしょうか。

Ben RubinがMeerkatを運用する中で発見したことは、まだ人々がどういった形でライブ配信を行えばよいかを理解していないため、TwitterやFacebookなどの既存のネットワークの中でセレブリティやメディアやニュースが配信を行うには良いが、一般の人たちが新たなネットワークを構築するには至っていないということですね。そして、Ben Rubinは既に知人同士が行う双方向のやり取りの中に継続のヒントがあるという知見を得ています。

これは、ツイキャスやニコ生などでの日本の現状からも理解しやすいことですよね。
日本では、すでに一般のユーザがモバイル配信を行ってオーディエンスを獲得するという流れも出てきていますので、日本の方が先行している気がします。

ただし、ライブ配信の最大の問題点は、面白いのかどうか見るまでわからない、もし面白くなかったら見た時間がそのまま無駄になってしまうという点にあるのだと思います。文字や写真ならスキャニングというかスキミングというか、要するに一瞬で自分にとって価値のある情報かどうか判断できるのに対して、ライブ配信は10分間見たけれども全く面白くもなんともなかったということが考えられます。そういった意味では、素人が行うにしろ、番組のようなフォーマットでクオリティが担保されていることがまずは最低限のユーザ獲得のためのポイントになるのではないでしょうか。

Ben Rubinも述べているようにライブ配信のあり方というのはまだ文化的土壌が全くないため、今後、ユーザによる試行錯誤の中で成功パターンが見えてくるのだと思います。

そういった意味で、
・相手のことをすでに知っていること
・双方向のやり取りがあること
という2点にBen Rubinが注目しているというのは興味深いですね。
10月にいったいどのようなプロダクトとして再発進されることになるのか、楽しみです。

それにしても、投資文化が醸成されているアメリカならではともいえると思いますが、このように、負けが見えれば早々にPivot(方向転換)して、新たなプロダクトの開発に進むあたりは、シリコンバレーならではのドラスティックな動きを見ているようで気持ちがいいですね。勝てない相手に無理な戦いを挑んで消耗しない、あるいは、事業の成長を左右するメインのファクターにおいて優位性を保つことが難しいと判断したら、方向転換をして新たな仮説を元に新たなマーケットを開拓しに行く。こういったカルチャーが世界を席巻するプロダクトを次々と生み出す源になっているのだと思います。

今年の3月からは、このライブ配信の流れにVR/ARのトレンドも合流する動きになります。
単にモバイルの中で見ているだけでは大して面白さも感じなかったようなことがVR/ARで360度動画になることで、同じコンテンツでも、これまでとは異なるエキサイティングな体験となるということは十分に考えられます。

個人的には、ライブストリーミング配信やエフェメラルマーケティングを考える上で、このVR/ARのトレンドというのは非常に大きな影響を与えると考えています。ライブストリーミング配信だけではありませんが、テレビ番組やYoutubeなども含めてかなり大きなインパクトを与えることになるのではないでしょうか。

管理人も先日、360度カメラで撮影されたVR映像を経験しましたが、たとえば、ちいさんぽやもやもやさまーずのようにただ街歩きをしてそれを解説していくだけの番組でも(当然、演者の話術が必要ですが)、初期の配信者が少ない段階では十分なコンテンツになるような印象を受けました。

日本で、ライブストリーミングのレバレッジをもっとも効かせられるのはLINE社だと思いますが、LINE社もBen Rubinが述べているような、セレブリティやメディアやニュースによるライブ配信をスタートしています。今後、このチャンネルが一般のユーザに開放されるかどうかがひとつの注目すべき点ですが、おそらくしないのではないでしょうか。LINE社はあまりCGM的な展開は積極的にはしないように思えます。ビジネスアカウントもそうですが、大企業に特化したパートナーシップを組むことで強力なブランド構築をしっかり行い成功しました。ツイキャスにしろ、ニコ生にしろ、CGM型のライブ配信メディアというのは、法律違反などをユーザが行っても誰も審査できないという点に最大のリスクがあるし、市場が形成されるまではアングラな点が常につきまとうのでLINE社が今さらそういったリスクをわざわざ選ぶようにはあまり思えません。素人を参入させるにしても、他のメディアで実績が出たブロードキャスター(ライブ配信者)(これはもう素人というよりセミプロみたいなものですね)を個別に勧誘していくアプローチを取るのではないでしょうか。

いずれにせよ、この分野は大変、ホットなので、引き続き、モバイルストリーミングおよびVR/ARのトレンドに注目していきたいと思います。

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