カンバセーショナル(対話型/会話型)・コマースを牽引するOperator社の取り組みについて

   

こんにちは。

前の記事でKik MessengerのファウンダーTed LivingstonのChat UIとBotOSに関する考え方を紹介しました。

・Botを人工知能や人間のオペレーターと連動させることで様々なタスクを行うアプローチが存在する。
(MagicやOperatorやFacebookの"M"などが取るアプローチ。例えば、チャットコミュニケーションを通じて、ユーザの欲しいものを紹介し購入してもらうパーソナルアシスタントのようなイメージ)

Ted Livingstonが述べているようにChat UIあるいはBot OSが次の時代のブラウザやOSの役割を果たすだろうという未来を見据えている起業家は彼だけではありません。

ここでは、上記でも取り上げられているOperatorの取り組みを見てみたいと思います。

operator-app

Operatorは、Uberの創業者であるGarrett CampとTwitter、Square、Xiaomi、Foursquareのエンジェル投資家であり、Flipboardのアドバイザーも勤めるRobin Chanが創業した会社です。

この会社はGarrett Campがスタートアップ・スタジオの成功例であるbetaworks社をモデルとして立ち上げたスタートアップスタジオExpaの中で進められているプロジェクトです。

スタートアップ・スタジオについて紹介しましたので、またExpaの取り組みについてもリサーチして紹介したいと思いますが、今日はExpa傘下で進められているOperatorの取り組みについて紹介します。

Operatorは、Chat UIを通じて、ユーザが欲しいものを人的手段でリサーチ・レコメンドしてくれるアプリです。
欲しいものをいつでもどこでもアプリひとつで簡単に購入できるサービスを提供しており、その目指すところのイメージは買い物版Uberのようなイメージでしょうか。

Chat UIとコマースの未来についての話題に触れるためには、Chris Messinaの2016年の1月20日に行った投稿に触れないわけにはいきません。

Twitterのハッシュタグの考案者としても知られるChris Messina(クリス・メッシーナ)氏は2016年1月20日にMediumに

2016 will be the year of conversational commerce

という記事を投稿しました。

この記事はYahoo JapanのエンジニアのMasahiko Satoさんによって日本語訳されているので、日本語でも読むことができます。

2016年はカンバセーショナル・コマースの年

また、このことは、THE BRIDGEでもSato Yukiさんによって取り上げられています。
2016年は「会話型コマース」の年になる

Chris Messina氏が2016年をconversational commerce(カンバセーショナル・コマース 会話型/対話型コマース)の年と断言したことは話題となり、カンバセーショナルコマースとは何なのか?PCやモバイルにおけるショッピング体験を根本的に変えてしまうものなのか、それとも、ただのBuzzwordなのか、カンバセーショナルコマースがコマースのあり方を根本から変えるとするとそのあり方はどのようなものになるのかが議論になっているように思えます。

Chris Messina氏は、この記事の中で具体的なソフトウェアやサービスに触れて、カンバセーショナル・コマースの興隆が始まったことに触れ、圧倒的な勝者はまだ見えていない状態だが、今後が楽しみだと述べています。

また、Chat UIの向こう側でオペレーションを行うのが人か人工知能かにはあまり興味がなく、やがて人が行っているのか、人工知能(bot)が行っているのかわからないくらい自然なやり取りになるだろうと言っています。

カンバセーショナル・コマースの現状を総括すると、Chat UIによるインターフェイス革命が起きることには様々な投資家や技術者が同意しているがそれがどのようなものになるのかは各社が各様の方法で模索・実験しているといったところではないでしょうか。

さて、上記の記事の中でも取り上げられているOperator社の取り組みについてですが、下記の記事を読んで頂ければどのようなアプリかは理解していただけると思います。

チャットベースのショッピングアプリ「Operator」 ー Uberの共同創業者が開発

電話オペレーターを使う時代に原点回帰?Uberの共同ファウンダーが手掛ける「Operator」

米国EC・小売HOT NEWS【6】Operator体験レポート

OperatorはユーザがChat UIを介して欲しいものをリクエストすれば、その分野に詳しい専門家が適した商品を紹介してくれるというサービスです。THEBRIDGEの記事にもあるように、イメージとしては、電話オペレーター時代のように、あるいはNTTの電話番号案内のようにオペレーターに欲しい情報を伝えてそれを返してもらうもののチャット版ですね。

このインターネット全盛期にオペレーター?という疑問を持つかもしれませんが、おそらくOperatorはユーザが満足感を感じるオペレーションフローとビッグデータの収集に重きを置いているのではないでしょうか。これはUberも同じだと思いますが、まずは人的アプローチによってノウハウを収集し、その情報を元に人工知能による自動化を進めていくのだと思います。

Chris Messina氏も述べていますが、ユーザにとっては、チャットの向こう側の存在がBot(人工知能)だろうが、人間だろうが、本質的な差はなく、適切なやりとりができれば何も問題がないというのが深層心理だと思います。

Facebookは"M"という人工知能によるアプローチでこの点をカバーする方針のようですが、ユーザの満足度やノウハウの構築という点からするとOperatorのようなアプローチの方が有利なように思えます。

というのは、人工知能は急激な発達を見せているもののまだまだ人間が満足するような返答ができるレベルにはないと思うからです。天気予報やスケジュールやスポーツの結果など答えが決まっているものを返すことには何の問題もないでしょうが、買い物というのは答えが決まっているわけではありません。ユーザの趣味嗜好やTPOに応じて求めるものは変わりますし、応対の中でユーザの心理も万華鏡のように変化していくことが予想されます。そういったシチュエーションで気の効いた返答や、ユーザがこれだ!と感じるようなレコメンデーション、キュレーションを提供するのに、人工知能だとまだ力不足な気もします。

何より、Chat UIの中で買い物を行うという流れをユーザがどこまで受け入れられるかという点に関する疑問も生じます。
Amazonや楽天での買い物体験と異なり、Chat UI(特にモバイルでの)には表示される画面にも限界がありますし、大量の候補の中から瞬間的にスキャニングをして自分にふさわしいものを選択し次々に絞り込んでいくということができません。
検索するのが早いのか、Chatでやり取りするのが早いか、Chatでのやり取りにスピード感がないと結局検索したほうが早かったねという結果に陥ることも想定されます。

そうすると、Chat UIの役割としては、

・自分が知らなかったものを薦めてもらえる
・欲しいものを最安値で買えるショップを探してもらえる
・時間はかかるが検索して絞り込みを代行して候補を3つに絞ってくれる

みたいな点に使いやすさを見出すのかもしれません。

それとも、Uberのように、今すぐ持ってきてとオーダーすると一瞬で運んできれくれるという、配送の短縮化(これはUberとの連携があって初めて可能なことだし、相乗効果もあるので当然見据えているメリットの一つだと思いますが)

ユーザが、どの点にChat UIでのコマースの最大の利点を見出すのか。
これを各社、まさに模索しているような状況ではないでしょうか。

いずれにせよ、どのようなサービスを提供するにせよ、コマースというのは、ある意味、インターネットビジネスにおける最大のマネタイズ手段でしょうし、コミュニケーションサービス提供者からすると、ユーザのコミュニケーションを妨げる可能性のある「広告」によるマネタイズより、買いたいものがすぐに簡単に変えるという「コマース」の方が関心が高いのではないのでしょうか。

TwitterもFacookもBuyボタンの実装によって今年コマースによるマネタイズを本格化していくようですし、カンバセーショナルコマースがどのように進んでいくのか本当に楽しみですね。

また、日本の各プレイヤーたちの方向性についても目が離せませんね。
Chat UIの最大のプレイヤーといえるLINEは先日LINE MALLの終了を発表しました。
これについてはあまりその裏側をリサーチしていないので、また調べてみたいと思いますが、新たなサービス導入を目的とした事業終了なのか、単にうまくいかなっただけなのか、メルカリとの勝負に勝てないと判断し、メルカリとの包括的提携という形に戦略をシフトしたのか。(このあたりの事情もまた調べてみたいと思います)

あるいは、EC分野における最大のプレイヤーともいえる楽天はどのように動くのか。数年前にこういった将来をみすえてか?買収したViberをどのように活かしていくのか。

世界最大のEC事業主であるAmazonはChat UIをどのように捉えているのか。インターフェイスの未来を音声コマンドに見据えてAmazon Echoのようなプロダクツに力を入れることでChat UIは戦略的に無視していくのか。

アプリによる流通金額で世界でも最大規模の規模に育ったメルカリは世界へ挑戦するために、メッセンジャーサービスのリリースや提携を行っていく構想はあるのか。

など楽しみなことが多いですね。
カンバセーショナルコマースとChat UI、引き続き、取り上げていきたいと思います。

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