メッセンジャーアプリを巡る戦いはむしろこれから始まる。ダークホースになるのはKik MessengerとTelegram?

   

みなさん、こんにちは。
今日の話題はメッセンジャーアプリについてです。
おそらく日本の方であれば、ほとんどの方はメッセンジャーアプリとしてLINEを利用していることだと思います。
またFacebookの友人とコミュニケーションを取るために Facebook Messengerを併用している方も多いかもしれません。

世界を見渡せば、北米圏を中心とし、世界中で利用されているWhatsappとFacebook Messenger(WhatsappはFacebookが買収したのでこの2つはFacebook Groupですね)。中国語圏を中心に広がるWeChat、韓国のカカオトーク、日本のLINEがアジアの代表選手。それぞれ、開発された自国を中心に周辺地域へシェアを伸ばしている状況です。それに加えるなら、楽天が買収したViberやインドで流行しているBlackberry Messenger、短期間でメッセージが消えてしまうSnapChatなどもつけ加えられるかもしれません。

インターネットの世界では先行してシェアを取ったものが優位性を持つというネットワーク効果(友だちが使っているからという理由で自分も使うという好循環が働くことで勝つものがさらに勝つという性質)が働きますし、メッセンジャーを変えるというのはスイッチングコストがかかるのでこのシェアをくつがえすのはなかなか難しいと思われているかもしれません。

実際に日本でもDeNAがcommというメッセンジャーアプリをリリースしていた次期がありましたが、早々に事業からの撤退を発表しました。またサイバーエージェントが755というアプリを出していますが、これはメッセンジャーアプリというよりは芸能人のメッセンジャー型ブログサービスのような位置づけになっており、LINEの直接の競合にはならないと思います。

では、世界を見渡した時にメッセンジャーアプリの世界ではどこが覇者となるのでしょうか。
また、これから後発でメッセンジャーアプリをリリースしても勝ち目はないのでしょうか。

興味深い流れとして、北米の若者を中心にシェアを伸ばしているKikMessengerと暗号化メッセンジャーTelegramの特徴を紹介し、この点について、考察したいと思います。

Kik Messengerは、2010年に設立されたKik Interactive社によるメッセンジャーアプリです。

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北米の若者に最も使われているアプリになっており、すでにユーザ数2億人を数えています。
特徴としては無料通話には対応していません。つまり純粋なメッセンジャーのみのソフトです。
Kik Messengerの一つの特徴は電話番号もメールアドレスも必要がないことです。
このことは個人情報の流出を気にするユーザがKik Messengerを選択する理由になっています。
もうひとつの特徴がKik Cardと呼ばれる機能です。これは、メッセンジャー内で気軽にコンテンツを引用したり、ゲームを利用したりすることができる機能です。

Kik Cardについて紹介します。

現在、各メッセンジャーアプリはアプリの中でメッセージの交換だけでなく様々な機能を提供しています。
LINEを例に取ると、大きなところでは、LINEのユーザネットワークを活かしたネイティブアプリのゲームを多数リリースしています。
また、ビジネスアカウントを企業に販売し、BtoCのコミュニケーションを可能にしています。
その他にも定額音楽サービスのLINE MUSIC、ストリーミングリアルタイム配信のLINE LIVE、決済機能のLINE PAYなどの機能もあります。また、優良/無料のLINEスタンプはもうすでにみなさんも使われていますよね。
LINE社の考え方としては下記と考えられるでしょう。

1. 無料提供し、ユーザを広める機能→メッセンジャー、無料通話
2. 集めたユーザのコミュニケーションを円滑にする機能→LINEスタンプ
3. 集めたユーザを活かした別事業の展開→ビジネスアカウント、LINEゲーム、LINE MUSIC、LINE LIVE

ビジネスアカウントはビジネスコネクトなど企業とユーザの双方向コミュニケーションを可能にする展開もスタートしていますので2に分類されるかもしれませんが、いまのところ無料スタンプにより大きなユーザリストを獲得し、そこにダイレクトメールが送れることを売りに企業へ販売しているように見えます。

Kik MessengerのKik Card機能は、Messenger内のユーザ間コミュニケーションの中で簡単に他のサイト(例えばSound Cloudの音楽やゲームなど)からコンテンツが引用できる機能を提供しています。

参考:ユーザー数2億人超!カナダ生まれのメッセンジャーアプリ「kik」のアプリ内ブラウザ機能は今すぐパクるべき。

つまり、上記の分類でいえば、2にあたります。LINEでいうLINEスタンプの機能をスタンプ以外にも拡張し、さらにAPIを公開することでサードパーティとの積極的な連携を行っています。イメージで言うとMessengerが一つのOSのようなものでそのOSの中に様々なアプリ(アプリ内アプリ)がリリースされているイメージがわかりやすいかと思います。

アプリ内アプリの展開といえば、かつてFacebookがフィードの中にゲームをリリースできる機能を提供していました。
(今もしているかもしれませんが、、)つまり、FacebookというOSの上にゲームセンターを作り、そこに様々なゲームメーカーの参入を促しました。このアプローチは、結局うまくいかなかったように思えます。

Facebook内でゲームがリリースされていた時は、Facebookのネットワークを利用した招待メッセージが大量に送られてきました。衰退した原因の一つはこの勧誘が煩わしかったことにあると思います。例えてみれば、みんなが交流を楽しんでいるパーティ会場で空気を読まずにネットワークビジネスの勧誘ばっかりしている人が疎まれるようなイメージです。
Facebookは個々のゲームのクオリティ審査を積極的には行っていなかったように思えました。その結果、ユーザの個人情報の獲得だけを目的としたようなアプリやゲームが蔓延してしまい信頼を一気に落としてしまいました。(世界的に流行したゲームもありましたが)

その点、LINE社はLINEのメッセージ機能との直接の連動はせずに、クオリティの高いアプリを別のネイティブアプリとして展開。メッセンジャー機能の利用はアプリ内でユーザ同士が友だちを招待するときのみに限定することで自然なコミュニケーションの中での招待を行わせ、成功しています。

さて、Kik Messengerの展開はどうでしょうか。
Kik MessengerがFacebookと異なるのは、同じアプリをOSと捉えるとしても、あくまでもユーザ間コミュニケーションを円滑にする機能を拡張している点に特徴があります。音楽やGIFアニメや面白画像などを気軽に引用できる機能です。これは例えてみれば、パーティ会場でみんなが話しているところに場を盛り上げるための楽器やおもちゃを持ってくるようなイメージですので、少なくとも空気を読まずにネットワークビジネスに勧誘されるよりは若者に支持されやすい展開です。

また、Kick Cardの中にはLINEのビジネスアカウントと同様、bot(特定のメッセージに対して関連情報を返信してくれる機能)を介して企業とユーザがコミュニケーションがコミュニケーションを取れるコンテンツも存在します。
これも企業の宣伝というよりは、ユーザによって有益な映像や画像やアドバイスを紹介してくれるような存在です。
このことでユーザはチャットコミュニケーションを通じて有益な情報や楽しい情報を取得したりまたそれを気軽にシェアしたりることもできます。

Kik Messengerの創業者Ted Livingstonの考え方を紹介します。

The Future of Chat Isn’t AI

Ted Livingstonは上記の記事の中で、今後のKikの方向性についていくつかの興味深い方向性を示しています。
要点だけ整理すると、下記のような内容です。

・Chatの将来はAI(人工知能)ではない
・Kikは1年半前からBotを採用し、うまくいっている
・TelegramやSlackも同じアプローチを採用している。Facebookも将来的に導入を予定しているという噂。
・Botの時代が来たといえるだろう。
・Botを人工知能や人間のオペレーターと連動させることで様々なタスクを行うアプローチが存在する。
(MagicやOperatorやFacebookの"M"などが取るアプローチ。例えば、チャットコミュニケーションを通じて、ユーザの欲しいものを紹介し購入してもらうパーソナルアシスタントのようなイメージ)
・このアプローチは興味深いと思うがKikが考えるBotのイメージとは異なっている
・Botの将来としてKikは様々なやりとりを簡単にすばやく行うことができる未来を想定している
・例として、野球場で座席にchatコード(日本で例えるとQRコードのイメージ)が書かれており、chatコードを入力するとbotのコミュニケーションが始まる
・botとの対話を通じてその場でビールをオーダーできる
・結果的にホームランを見逃さなくて済む!
・他のアプリを開いたり、操作方法を悩まなくて済む。すべてKik上のchatのやり取りで済む
・このようなbotの時代を牽引するのは、Kik, WeChat, Line, Facebook, Slack, and Telegramなどの企業になる
・いわばBotOSの時代が来ようとしている
・Chatアプリ(メッセンジャーアプリ)が新たなブラウザとなる、新しいインターネットの時代が始まろうとしている

Ted Livingstonはこの中で明確にメッセンジャーが新たなOS(ブラウザ)となる時代の到来を予言(宣言)しています。

確かに、現在の有象無象のアプリが乱立している状況はユーザに混乱をもたらしていますし、サードパーティとしてもiOS、Andoridで独自アプリをリリースする以外に強力なメッセンジャーアプリに相乗りするという選択肢を持てれば、初期のユーザ集めがかなり簡単になります。

Kik Messengerのような展開はLINE社も行っておりません。
LINE社がビジネスコネクトを有料のメニューとして企業に販売しているのに対して、Kik Messengerはまずはマネタイズを考えずユーザ集めに奔走しています。そのため、LINEよりフットワーク軽く様々なサードパーティと連携しています。
アプリのマーケットプレイスになるという発想はいまのところLINE社からは出てきていないので、ここに日本でも後発としてLINEとは違うメッセンジャーアプリが台頭するアプリの参入余地はあるのかもしれません。そういった意味ではDeNA社の撤退は少し時期尚早だったかもしれませんね。ユーザが全く増えなかったのが原因なのでしょうが、この種のアプリはスケーラビリティに応じたサーバの運用スキルやトラフィックの集中に対応するチームが必要なので、ソーシャルゲームやメディア運用経験がある企業でないとすばやい展開がしづらいというのが現状かと思います。

さて、今回取り上げるもう一つのアプリはTed Livingstonさんも次世代のBotOS戦争を争う候補としてあげていましたがTelegramというメッセンジャーアプリです。

Telegram-logo
Telegramの最大の特徴はメッセージが暗号化されている点にあります。
月間アクティブユーザ数はすでに1億人を超え、一日に35万人のペースで急激にユーザ数を伸ばしています。

参考:暗号化メッセージングアプリのTelegram、月間アクティブユーザー数1億人を達成。新規ユーザーは35万人/日

おそらく世の中の大半の人は実際に傍受されて困るようなやりとりはしていないと思いますし、既存のメッセンジャーアプリも簡単にハッキングされましたよ、というようなレベルの運用はしていないと思いますが、それでもこのアプリが圧倒的な伸びを見せているのは世界中の人々のセキュリティに関する心情を象徴したできごとだと思います。

Kik Messengerも電話番号やメールアドレスとの連動を行わない点が支持されていると思いますし、このTelegramも強固なセキュリティが支持されています。実際の運用レベルなどは一般の人には全くわからないので、こういったセキュリティを強化するという特徴を打ち出すことが現代の時代に人を惹きつけるためのトレンドになっているのかもしれません。

日本でもベッキーのLINE履歴の流出が話題になりましたが、これもハッキングなどではなく、古い端末にソフトがインストールされたままの場合、古いソフト上でやり取りが残ってしまう現象を利用したものか、もしくは関係者が人的に盗み撮りしたものをリークしたものが原因でセキュリティ・ホールに対する攻撃の結果ではないと思いますが、こういった事件は知識を持たない一般の人からすると、いつなんどき履歴が流出してしまうかもしれないという不安を増強するものだと思います。

Appleがアメリカ政府からのセキュリティロックの解除を拒否して話題になりましたが、Kik Messengerもおそらくテロ防止に関する法律との間で今後、様々な確執を引き起こすことが予想されます。にも関わらず、各国政府がそういった態度を取れば取るほど、逆説的にこのTelegramのユーザが増えていくことが起きる気がします。

Kik Messengerにしろ、Telegramにしろ、既存のメッセンジャーアプリと差別化することで特定の方向性を持つユーザを強烈に引きつけています。メッセンジャーの世界もまだまだ新たな方向性として後発参入でもシェアを一気に獲得することがまだまだ可能なのかもしれません。そして、この世界では、チャットインターフェイスをどのように利用してさらなる展開が可能なのかというTed LivingstonさんがいうようにBotOSの覇者を巡る戦いがもう始まっているのかもしれません。

楽しみですね。
このブログでも今後もメッセンジャーアプリの動向を注意深く見ていきたいと思います。

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